国益を守る

   アメリカ外交政策の批判的検討

  

   著者: ハンス・J・モーゲンソー

      :宮𦚰昇・宮𦚰史歩

  判型:  A5判・並製・456ページ    

  発行日:2022年3月31  

  ISBN978-4-909970-13-8    

  定価:2,700 円+税      

目 次

 

謝 辞 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 

第1章 アメリカ外交政策の原動力 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9

1.米国の国益 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10

2.米国の外交問題の経験 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12

3.アメリカ外交政策の三つの時代 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17

4.ウィルソン主義、孤立主義、国際主義     ユートピア主義の三つの形態 ・・・・ 30

5.国益の道徳的尊厳 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35

第2章 現代の三つの革命 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 41

1.政治革命 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 41

2.技術革命 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 51

3.道徳革命 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 57

第3章 米ソ間の真の問題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 64

1.三つの選択肢 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 64

2.米国の選択 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 69

第4章 アメリカの戦後政策の四つの知的錯誤 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 82

1.ユートピア主義 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 83

2.合法主義 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 90

3.感情主義 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 100

4.新孤立主義 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 113

第5章 平和への道 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 122

1.二つの選択肢:交渉か戦争か ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 122

2.交渉による和解の条件 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 124

第6章 判断の失敗:ヨーロッパにおいて ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 139

1.脅威と抑止力 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 140

2.ロシアの力の過小評価 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 143

3.米国の力の誤解 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 152

4.軍事力と外交行動 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 164

第7章 判断の失敗:アジアにおいて ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 176

1.米国の対中政策の混迷 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 177

2.人心掌握の闘いとしてのアジアの争奪 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 182

第8章 意志の欠如 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 193

1.民主政府の代償 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 194

2.政治的リーダーシップの弱さ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 199

訳者あとがき ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 212

索 引 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 222

訳者あとがき

 

訳者あとがき

 

 

モーゲンソー(Hans J. Morgenthau)が、EHカーなどともに、国際政治学の学問の祖であることは言を俟たない。そして他の国際政治学者、たとえばウォルツやコヘインに比して圧倒的に参照されてきたことも想像に難くない。実際、日本国際政治学会の学会誌国際政治でのモーゲンソーの論及は、上記二者に比して約二倍に及んでいる(大矢根 2016: 68)

20世紀前半の世界は、カント的理解即ち理想主義的傾向が強い国家間関係として認識されたことが多く、戦間期は EHカーや外交史家等の歴史的アプローチが主流であった。第二次世界大戦の勃発と冷戦の開始により世界を、アメリカを、現実主義の観点から覚醒させ、国際政治学を確立したのが泰斗モーゲンソーである。

モーゲンソーは、ドイツで教育を受け欧州で国際法学を教授した後、1937年に渡米しシカゴ大学教授となった(モーゲンソーの研究史については、後述の宮下(2012)が詳しい)。モーゲンソーが当時新たに国際政治学をうちたてるに至ったのは、それまでの政治学とも国際法学とも、あるいは外交史とも分類しにくい対外政策の体系化、及び国際政治を国益と力で分析するというアプローチが求められたためである。米国は、当初中立を保っていたものの欧州の第一次世界大戦に参戦し、大戦後平常への復帰を目指し、再び孤立主義に自らをとどめた。ウィルソンの国際連盟の構想に背を向けたのは、ほかならぬ米国の議会であり、その背後には米国の民主主義があった。それにもかかわらず、日本の真珠湾攻撃を契機として第二次世界大戦の参戦と戦後ソ連の東欧支配により、米欧分断を超える国益と力の重要性に米国は気づいた。これらの分析のもと、覇権国イギリスの没落後、冷戦の主役として欧州やアジアに関与しつづけた大国アメリカを導き、国務省顧問として政界に直言し、後年にはベトナム戦争への介入に警鐘を鳴らしたのがモーゲンソーである。

これまでモーゲンソーは、多くの名著を世に問うてきた。国際政治の学徒であれば誰しも読んだPolitics Among Nationsは、三度にわたり邦訳された(伊藤皓文・浦野起央訳『国際政治学―力と平和のための闘争』(原著第三版、アサヒ社、1963)、現代平和研究会訳国際政治―権力と平和』(原著第五版、福村出版、1986)、原彬久監訳国際政治―権力と平和(岩波文庫、2013年))。

この最高の名著に次いで国際政治の学徒を魅了し、国際政治学の基礎を築いた著作の一つがIn Defense of the National Interest: A Critical Examination of American Foreign Policy, Alfred A. Knopf Publisher, N.Y., 1951である(モーゲンソー没後の1982年に、University Press of Americaから再版される)。本書は、翌年イギリスでAmerican Foreign Policy: A Critical Examination (Methuen, 1952)として出版され、それらをもとに邦訳、すなわち鈴木成高・湯川宏訳世界政治と國家理性(創文社、1954)が刊行された。

しかし鈴木・湯川訳は、たいへん残念なことに随所に当時の学術的背景が照射され(例えば、モーゲンソー自身の言及をふまえつつも、本書表題のnational interestにマイネッケ的なStaaträson「国家理性」の和訳をあてがう)、また訳文自体が時代的拘束性により旧漢字による旧時代的色彩を帯び、既に絶版となって久しい。

21世紀の困難な時代に生きる我々が、この古典的名著を日本語で摂取し、日本語による社会科学の発展を考えるとき、約70年前の翻訳に頼ることは難しい。モーゲンソーと同時代の研究者以来、高い関心が払われてきた同書に、日本の若い学徒が日本語で接することができないのは不幸なことであろう。

そこで、早稲田大学名誉教授・山本武彦氏(日本安全保障貿易学会初代会長、グローバル・ガバナンス学会初代会長)の発案と推薦を得て、英文翻訳・通訳に従事してきた宮𦚰史歩と国際政治史・国際政治学を研究してきた宮𦚰昇が同書の新訳を行うこととなった。新訳を日本の学徒に問うことで、この古典的名著が日本を再び導くことが大いに期待される。むろん本訳書とて、多くの課題を抱えていることを覚悟している。モーゲンソーの学知を日本語の体系に吸収する艱難辛苦から逃れることはできなかった。日本語が十分流れていないとすれば、それはむろん訳者の責任である。その点を読者にお詫びしたい。(以下・略)

20223

  宮𦚰 昇 

宮𦚰史歩

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