人間の安全保障はなぜ出現したのか

 言説分析からみた「人間」重視の思潮

 

著者:長尾 名穂子

判型:A5判・並製・256ページ

発行日:2020年2月22

ISBN9784909970008

定価:2,700円+税

 

本書は、2012年に創価大学大学院に博士学位論文として受理された内容を基礎としている。多少の修正は加えているが、大きな変更は施していない。

「人間の安全保障」を研究テーマに決めたのは、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科修士課程に在学中の時であった。この概念は我々に何を訴えようとしているのか、これから何を行おうとしているのか、人権とは異なるのだろうか、疑問に思う点がつきなかった。

疑問の一つに答える目的で、修士論文では日本政府による「人間の安全保障」を分析した。本書の第5章はその修士論文を基にしている。指導教授であった白石昌也先生は厳しかったが、研究とそれを論文という形にすることの奥深さを教えてくださった。進学した創価大学大学院法学研究科博士課程では故高村忠成先生にご指導いただいた。同じく法学部の加賀譲治先生、飯田順三先生、中山雅司先生からは多くの助言とお力添えをいただいた。感謝申し上げたい。

学位論文の出版に8年を費やしてしまったのは決意が定まらなかったからだ。学位取得後、グローバル・ガバナンス学会で大変お世話になっていた早稲田大学の山本武彦先生から、研究者として学位論文を出版する重要性をご教示いただいた。早速出版を志したが、単著を出すということの重みと責任に筆が止まった。本にするからには完璧でなくては、という思いが自分を追い詰めた。ふっきれたのは、その後訪れた出産と育児のおかげだった。完璧なんてありえない育児の中で自分は自分でしかいられないことを受け入れることができたのだと思う。そして、人生は思っているより短く、一生のうちでやれることには限りがあると感じた。出版しようと思えた。

 

読み直して見ると、反省すべき点ばかりが目についた。しかし、独自の観点から「人間の安全保障」を追究するという姿勢だけは貫いていると思う。本書はその大きな課題に8年前の自分が挑んだ記録なのだ。

                               本書 あとがき より

 

目 次

 

第1章 序論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3

第1節 問題の所在 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3

第2節 「人間の安全保障」に関する先行研究 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4

第3節 本研究の目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9

第4節 本研究の方法論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11

第5節 考察対象 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15

第6節 本書の構成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16

2章 国際社会における「主権」概念の変遷 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20

第1節 国際連合における「主権」概念 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21

第2節 主権と領土保全の関係 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27

第3節 考 察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 33

第3章 国際社会における「平和」の変化・・・・・・・・・・・・ 36

第1節 安保理決議における「平和」概念とその用語法 ・・・・・・・・・・・・・・・ 36

第2節 国連憲章における「平和」と安保理決議の「平和」 ・・・・・・・・・・・・・ 40

第3節 考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 44 

第4章 カナダ政府の「人間の安全保障」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49

第1節 アックスワージー外相の人間の安全保障政策 ・・・・・・・・・・・・・・・ 49

第2節 四つの主要文書にみる「人間の安全保障」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 52

第3節 カナダ政府の人間の安全保障政策の特徴 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 63 

第5章 日本政府の「人間の安全保障」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 67

第1節 日本外交の基軸としての人間の安全保障政策 ・・・・・・・・・・・・・・・ 67

第2節 外交青書にみる「人間の安全保障」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 72

第3節 政府要人の主要演説と「人間の安全保障」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 91 

第6章 欧州連合(EU)「人間の安全保障」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 147

第1節 EUの安全保障戦略 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 147

第2節 『欧州のための人間の安全保障ドクトリン』 ・・・・・・・・・・・・・・・ 149

第3節 ドクトリンの特徴 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 156 

第7章 アジアにおける「人間の安全保障」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 160

第1節 APECの「人間の安全保障」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 160

第2節 ASEANの「人間の安全保障」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 165

第3節 考 察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 170

第4節 「人間の安全保障」概念と「人間」の視点の関係性 ・・・・・・・・・・・・・ 171 

第8章 結論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 175 

参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 181 

参考資料1 国連総会決議における「主権」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 191 

参考資料2 国連安保理決議における「平和」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 222 

索引 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 243 

あとがき ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 246 

 

                                                                                                              専門書↑

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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